アジアの未来2010 「開かれた経済圏へ〜新たな成長基盤を築く」

学生リポート

「日本がアジアに対して果たすことのできる役割」

有田 直紀
東京大学 大学院経済学研究科・経済学部 経営学科(4年)

2日間の講演を聞いていて、頻繁に耳にした単語が2つある。
1つは”Sustainable Growth”
この単語が繰り返し色んな場面で使われていることに興味が沸いた。 アジアはただ盲目的に量的(例えば、GDPの数字を増やすことだけを目標にするとか)な発展を追求するのではなく、質的(例えば、環境への配慮だとか、社会情勢・福祉にも配慮するだとか)な発展にも目を向けていこうとしていることを実感した。
2つ目は”Comparative Advantage”
これは、経済学の教科書や授業ではよく使うものの、新聞や書籍、報道などに出てくることはあまりない。そのため、実社会では使わないのかなというイメージを抱いていたので、今回の国際フォーラムの場でこの単語が頻繁に出てきたことには驚いた。
現在の日本は非常に内向きだからなかなか実感できないが、おそらくアジア各国は、それぞれの比較優位に基づいて分業していこうという意欲を持っているのだろう。
この2つの単語を念頭に置きながら、FTAやアジア版グリーンニューディールのパネル討論を聞いていて疑問に思ったことがあった。
それは、「日本の比較優位は何で、日本はこれからどうやってアジアに貢献していけるのだろうか」ということである。
アジア各国の多くの代表は、「日本には優れた技術の蓄積がある。だから、それをアジアに向けて発信してほしい」という意図を持っているように思えた。
では、日本の側に、日本の技術をアジアに発信していくビジョンがあるかというと、そうでもないみたいである。
これは、アジア版グリーンニューディールのパネル討論の際に韓国が見せていた姿勢とは非常に対照的である。韓国は国を挙げて、環境ビジネスをアジアに展開しようというビジョンを示している。
環境ビジネスに限らず、日本はアジアに具体的にどう接していくかのビジョンを上手く示せていない。「東アジア共同体」のスローガンは良かったものの、アジアエラスムス計画は韓国が主導しているし、ASEAN+3はこれまでASEAN主導だった。
日本は、アジアにどう接していくかの具体的なロードマップを描かないといけない。
今回の会議では他にも気になったことがあって、環境ビジネスを展開するための下地となる、キャップトレードのような枠組み作りについての提案が乏しかった。
となると、アジアを包括するような経済的枠組み作りについてはまだまだ日本がイニシアチブと取ることのできる余地が大きいと思う。
日本は、考えてみれば、COP3の議長国でもあったし、戦後、様々な場面で国際的な枠組み作りに携わっている。これは、他のアジアの国々にはない経験だと思う。
このような経験の積み重ねは、日本がもつ比較優位の一つではないかと思う。だとすれば、日本に求められる役割というのは、アジアを包括するような枠組み(排出権取引だったり、CDMだったり、AMFだったり、色々あるだろう)を率先して作っていくことにある。そして、その仕組みを使って、上手く日本の技術をアジアに展開していくことにあるだろうと思った。
折しも、本レポートを作っている時期に、日本では新政権が発足した。鳩山政権は非常に大まかなビジョンを示していたので、新しい政権にはもっと具体的なロードマップを描くことを期待したいと思う。

 


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