「開かれた復興を目指して」
鈴木 佑梨
慶應義塾大学 法学部 政治学科 3年
日本は"開かれた復興"を目指さなければならない―今回の会議において、全ての講演に共通していたメッセージは、この1点に集約されるのではないだろうか。東日本大震災から2カ月余り、日本はただ一心に震災復興に力を注いできた。多くの日本人は、その進捗状況を、日々の報道を介して把握している。しかし、この未曽有の大災害とその後の日本を、世界の視点、世界全体の枠組みから見るとどう捉えられるのか、そのようなことを意識した人はどれくらいいただろうか。今回の会議は私に、アジア諸国が今日本に何を望み、この地域の未来に対しどのようなビジョンを描いているのか、そういった日本を脱した視点を知る機会を与えてくれた。
その中で、私が最も痛烈に感じたことは、アジア諸国全体が、現在の内向きの日本を大変懸念しているということである。気候変動や自然災害、エネルギー枯渇や安全保障問題など、国境を越えたグローバルな問題がこの地域に大きく横たわる中で、地域統合の重要性は日に日に増しており、今回の会議においても多くの講師が、未来ビジョンとしてその実現を掲げていた。現在は、1国の問題が地域の問題に、1国の安定が地域の安定に、1国の成長が地域の成長に直接繋がっていく時代なのであり、地域間の協調・協力は欠かせない。そのような状況下で、日本が内向きの姿勢をとることが、アジア地域全体に影響を及ぼしてしまうのは当然のことかもしれない。マリア・バウティスタ氏は、そのような姿勢がこの地域のサプライチェーンに支障をきたすことに懸念を示し、尹徳敏氏はそれが地域に力の空白をもたらす可能性を主張した。またマイケル・オースリン氏によれば、それによって日本のODAが減額する可能性もあるという。このように、日本が内向きになることは、アジア地域統合に向けた様々な領域で障害となるのである。しかしそれは逆に、アジアにおける日本のプレゼンスがいかに重要なものであるかを示しているとも言える。この会議を通して、アジア各国が、内向きではなく外向きに開かれた日本の復興、つまり各国との協調・協力を通した日本の復興を強く待ち望んでいるということをひしひしと感じた。
しかし同時に、この会議によって、私は、このまま日本が内向きの姿勢をとり続けた場合、周りのアジア諸国が日本を見捨てる可能性もあるのではないかという懸念も抱くようになった。ASEAN諸国の講師はみな、持続的な経済発展、持続的な地域統合を未来ビジョンとして掲げ、そこには、今の日本にはない強力なパワーというものが感じられた。「日本が内向きになっている間にも、世界はどんどんと変化している。」というマイケル・オースリン氏の言葉は、今の日本の置かれている状況を全て表している。胎動し続けるアジアと、静止状態の日本―今回の会議を通して、この2つの対比がまざまざと浮き彫りになった。しかしそれと同時に、この会議によって、日本がこれから進むべき復興の道筋も明白に示されたのではないだろうか。